持つべきものは朋

㈱エンビジョン 代表取締役社長 COO/ミッション:「英語が当たり前に話せる世代をつくる」/学校向けオンライン英会話事業/外国語サービス事業/人材派遣事業

学校における組織変革をデザインする

■いま、学校組織の変革が求められている

文科省が2020年を目途に進めている「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画※」により、小学校から大学に至るまで、日本のありとあらゆる「学校」がこれまでの教育の在り方を見直し、新たな時代に対応した人材を輩出できるカリキュラムへの変革が迫られています。

※ http://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/gaikokugo/__icsFiles/afieldfile/2014/01/31/1343704_01.pdf

 

学校によっては「これまで通り受験メインで行く」という方針のところもありますが、多くの学校が答えのない状況で何をすべきか決めかねていたり、迷っている状況を目にしたり、耳にしたりします。

 

今回は、100校以上の現場を回り、実際にいろんな先生方との対話の中で感じた、「変革がうまくいている学校」と「そうでない学校」の違いを、組織変革の切り口から書いてみたいと思います。

 

■学校の組織変革における3つの違い

現場の先生方から所属している学校について話を聞くとき、大きな違いがでるのは下記の3つのポイントです。

  1. トップのビジョン
  2. 現場の先生方のオーナーシップ
  3. 学習する組織設計

以下、それぞれについて話していきたいと思います。

 

■ 1.トップのビジョン

仕事柄、校長先生はじめ管理職の先生方とお会いすることも多いのですが、変革が進んでいる学校は、共通して明確な「ビジョン(あるべき姿)」が設定されています。

ウェブサイトを見ても、「どんな生徒を育てたいのか」、「●年後にどうなっていたいのか」、「実現のためにどんなことをしていくべきなのか」などといったことが記載されていることが多いです。

当たり前ですが、どこに向かっていくかが定義されていなければ、エンジンをかけても走り出すことはできません。むしろ、暴走してしまうかもしれません。企業同様、これはトップが意思決定すべきものだと思っています。

 

■ 2.現場の先生方のオーナーシップ

ただ1点、企業と違って気を付けるべき点は、トップがビジョンを設定し、一方的なトップダウンで現場に落とし込むと、変革が進まない(あるいは、あらぬ方向に進んでしまう)ことがある、ということです。

 

企業にいる個人として、学校の組織は少し特殊で、現場の先生間の合議制によって決まることが多くある、ということです。トップである校長先生が「Aだ!」といっても、現場の先生方が「いや、Bだ!」と言えば、Bに進んでいくのです。

 

ここで重要なのは、いかに現場の先生方を巻き込み、変革を「自分事化」してもらえるかです。変革をしていく中では必ず無関心だったり、抵抗する先生方も出てきますが、決して上から変えようとするのではなく、その先生に協力してもらえることで、自分事化してもらえそうなことを一緒に考え、作っていくことがキーになります。

 

ひとたびオーナーシップを持った先生は、びっくりするほどの工夫をし始め、水を得た魚のように変革を推進していくメンバーに変わっていきます。

 

■ 3.学習する組織設計

そして、何よりも重要なのは、学習する組織設計がされているかどうか、です。ざっくり言い換えれば、「PDCAサイクルが回せているか」ですが、大きく3つのレベルでの設計がなされる必要があると思っています。

 

  • 個人のレベル:授業自体が生徒にとって面白く、学びあるものかどうか?
    → 授業について、生徒からフィードバックをもらえる体制になっているか?
      もしくは、生徒が自由に意見を言ってくれる関係・雰囲気になっているか?

  • チームのレベル:教科会や●●部(ex 教材開発部、入試広報部)等で振り返りや相互フィードバックを行える体制になっているか?
    → それぞれの授業の見学などを通じたフィードバックや勉強会など、個人の気
    づきを共有できる体制・雰囲気になっているか?

  • 組織のレベル:設定したビジョンに基づき各チーム(プロジェクトを含む)・個人が主体的に変革を進めているか?その結果が出ているか?
    → 具体的なアクションプランが進められているか?その結果は出ているか?
      結果が出ている場合、どんな要素がポイントになっているか?
      反対に結果が出ていない場合、何が障害となっているか?

 

■おわりに

学校における組織変革をデザインする3つの要素として、「ビジョン」「オーナーシップ」「学習する組織設計」を挙げましたが、これらの要素は相互に影響しあっているといえます。

 

「答えのない時代に活躍できる人材を育成するために、今学校がやるべきことは何か?」という、答えのない問いを解くために、トップと現場の先生方が協働し、生徒を巻き込んで、いろんな学びを得ながら試行錯誤してより良き教育の在り方を目指す組織作りこそが、個人的には一つの解だと思っています。

 

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