持つべきものは朋

㈱エンビジョン 代表取締役社長 COO/ミッション:「英語が当たり前に話せる世代をつくる」/学校向けオンライン英会話事業/外国語サービス事業/人材派遣事業

子どもの「自己肯定感」を高めるために、私たちに何ができるか?

 

f:id:tomoyan0920:20170616100516j:plain

 先日、教育再生実行会議の第10次提言がまとめられ、安倍首相に手交されました。*1

 今回の提言のタイトルが、「自己肯定感を高め、自らの手で未来を切り拓く子供を育む教育の実現に向けた、学校、家庭、地域の教育力の向上」ということもあり、学校向けに教育サービス事業を行っている側の人間として、どんな貢献ができるかについて改めて考えてみたいと思います。

 

■「自己肯定感」について

 今回の提言の中でキーワードになっている「自己肯定感」ですが、
下記のとおり記載されています*2

 自己肯定感については、これまでも様々な捉え方が示されてきましたが、その一つとして、勉強やスポーツ等を通じて他者と競い合うなど、自らの力の向上に向けて努力することで得られる達成感や他者からの評価等を通じて育まれる自己肯定感と、自らのアイデンティティに目を向け、自分の長所のみならず短所を含めた自分らしさや個性を冷静に受け止めることで身に付けられる自己肯定感の二つの側面から捉えることが考えられます。

 自己肯定感の二つの側面。
これは、英語で言うところの「Self-confidence」と「Self-esteem」と捉えることができます。

 

具体的には、ある記事の定義が分かりやすいです*3

self-confident is to trust in oneself, and, in particular, in one’s ability or aptitude to engage successfully or at least adequately with the world.

 つまり、自分自身を信じることができるかということ。
 この感情は、成功体験によって生み出され、結果的に生まれた「Confidence」によって、次のステップにチャレンジし、新たな成功体験を生む、というサイクルにつながっていきます。

 

self-esteem is our cognitive and, above all, emotional appraisal of our own worth. More than that, it is the matrix through which we think, feel, and act, and reflects and determines our relation to ourselves, to others, and to the world.

 こちらは少し抽象的ですが、長所・短所を含めて自分自身を認めることができるかということ。

 この感情は、自分自身が所属する家族やコミュニティとのつながりを通して自分の存在を受け入れてもらい、自分自身が価値ある存在だと心から思えることによって育まれていきます。

 

 記事の中でも触れられていますが、self-confidenceが高い人が必ずしも高いself-esteemを持っているわけではありません。これらをひっくるめて「自己肯定感」と呼ぶのであれば、self-confidenceとself-esteemを両輪で高めていくことが求められます。

 

■「自己肯定感」の向上を阻む要素

 まず、日本においてself-confidenceの醸成を阻む要素としては、「できた!」という成功体験が少ないこと、そして子どもたちの成功体験を「ほめる」という行動が少ないことが挙げられます。

 もちろん、全国の現場を回る中で改革を積極的に進めている学校・先生方ともお会いする機会は増えてきましたが、まだまだ旧来型の「授業」を行っている学校は多いです。

 英語の授業を例に挙げれば、教科書のReading→単語(発音)→文法解説→ドリル→ペアでちょっとだけ会話と、50分間をほとんど先生→生徒の一方通行、かつ日本語で進めており、英語をコミュニケーションのツールとして使ってみて、「できた!」経験をさせる仕掛けが十分にできておらず、結果的にほめるということもあまりできていない状況を見聞きします。

 

 それから、self-esteemの醸成を阻む要素として、自分自身が身近な存在である家族や友人、学校や地域で会う人たちと、健全な関係構築ができないことが挙げられます。

「家族から虐待を受けた」「クラスメイトからいじめを受けた」「地域の中でないがしろにされた」等、自分自身が今いる場所で必要とされている、重要な存在だと思えない状況に陥ると、自分で自分自身を認めることができなくなり、self-esteemが下がります。

 日本の場合、同質性を前提とする中で、少しでも「同じでない」人たちが標的になりがちで、結果的にself-esteemを下げてしまうことがあると思っています。

 私も地方出身ですが、特に地方のコミュニティでは自分が思い切って外の世界に出ない限り、自分と社会との関係性が生まれてからずっと変わらないまま大人になっていくため、自分で思う自分の価値がずっと変わらないということがあり得ます。

 

■自分たちに何ができるか?

 私たちが提供する「学校向けオンライン英会話」は、2つの自己肯定感を醸成するソリューションになりうるんじゃないかと思っています。

 

 self-confidenceを高めるという意味では、実際の外国人講師との「(マンツーマンでの)会話体験」をすることで、自分が習った英語を使ってみて、「自分の英語が相手に通じた!」という成功体験を生むことができます。
 特に、私たちが採用しているフィリピン人講師は親切かつ明るい性格で、相手をほめ、励ますことが得意です。彼らは生徒ができたらほめますし、できなくても励ましてくれます。講師との会話を通じて英語コミュニケーションの成功体験を積み、self-confidenceを高め、次のステップにチャレンジにしようとするサイクルを生むことに貢献できるのではないかと思います。

 

 そして、self-esteemを高めるという意味でも講師との会話体験は非常に重要な役割を果たせると思っています。

 特に、地方の子どもたちにとって、外国人とコミュニケーションできる機会は限定的ですが、インターネットを活用してどこでも外国人とオンラインでつながることができ、会話をすることが可能です。
 重要なのは、仮に自分が現在のコミュニティの中で自己肯定感を見いだせない状況があったとしても、画面の向こうに自分と外との関係を新たに作ることで、異なる文化や考え方に気づき、多様性の存在を知るということと、自分自身をありのまま受け入れられるようになるということです。

 

■おわりに

 実際に、オンライン英会話を導入した学校の中から、海外に興味をもち、英語を好きになり、話すことに自信をつけて留学を決意し、努力して実現した生徒も出てきました。

 また、最近嬉しかったのは、「講師との会話の中で自分の夢をたびたび聞かれ、あらためて考える機会を持てたことで、自分の夢が見つかった!」という生徒も出てきました。

 こういった生徒たちを1人でも多く増やしていくことが、我々のできることであり、やるべきことなんだろうと実感しています。

 

 英語、そして現状は英会話の体験を提供するのみですが、生徒たちのself-confidenceとself-esteemの両輪を高め、自信とチャレンジ精神、自分自身の価値を認め多様性への寛容さを高めていくことに引き続き貢献していければと思います。